古代文学
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古代文学(Ancient literature)は、古代(本稿では、紀元前30世紀頃の青銅器時代から古代末期の終わる8世紀頃まで)に、石、石板、パピルス、ヤシの葉、金属等に記録された宗教文書、科学文書、物語、詩歌、戯曲、勅令や宣言、その他の筆記情報である。筆記が広がる前の口承文学はあまり残されてこなかったが、いくつかの文献や断片として残っているものもある。また、書かれたものであっても、後世の破壊から逃れられず、失われてしまったものも膨大な数が存在すると考えられる。ドイツの歴史家アウグスト・ニッチキは、現存するいくつかの物語は、最終氷期や中石器時代に起源をもつと考えている[1]。
古典古代
[編集]青銅器時代
[編集]初期青銅器時代:紀元前3000年代。最も古い筆記された文書は、紀元前2600年頃のシュメール文字によるものである[2]。名前が残されている最も古い筆記者は、シュメール人の女神官エンヘドゥアンナであり、紀元前24世紀頃の人物である[3]。以下はおおよその年代を示す。
- 紀元前2600年:w:Instructions of Shurupaak(シュルパックの教訓)やw:''Kesh temple hymn''(キシュ神殿賛歌)を含むアルサラビクから出土した文書【シュメール】
- 紀元前2600年:サッカラから出土した最古のThe Life of Metjen(メッチェンの生涯)【エジプト】[4]
- 紀元前2500年:最古のパピルス文書(航海日誌)であるw:Diary of Merer(メレルの日記)【エジプト】
- 紀元前2400年:Cannibal Hymn(カンニバル賛歌)を含むピラミッド・テキスト【エジプト】
- 紀元前2400年:Code of Urukagina(ウルイニムギナ法典)【シュメール】[5]
- 紀元前2400年:パレルモ石【エジプト】
- 紀元前2350年:宰相プタハヘテプの教訓【エジプト】
- 紀元前2270年:Enheduannna's Hymn(エンヘドゥアンナ賛歌)【シュメール】
- 紀元前2250年:w:Autobiography of Weni(大ウェニの自伝)【エジプト】
- 紀元前2250-2000年:最古の物語であるギルガメシュ叙事詩【シュメール】[6][7]
- 紀元前2200年:w:Autobiography of Harkhuf(ハルクフの自伝)【エジプト】[8]
- 紀元前2100年:Curse of Agade(アッカドの呪い)【シュメール】
- 紀元前2100年:w:Debate between Bird and Fish(鳥と魚の議論)【シュメール】
- 紀元前2050年:ウル・ナンム法典【シュメール】
- 紀元前2000年:コフィン・テキスト【エジプト】
- 紀元前2000年:ウル滅亡哀歌【シュメール】
- 紀元前2000年:w:Enmerkar and the Lord of Aratta(エンメルカルとアラッタの貴族)【シュメール】
中期青銅器時代:紀元前2000年頃-1600年頃。以下はおおよその年代を示す。
- 紀元前2000-1900年:w:Tale of the Shipwrecked Sailor(難破した船乗りの話)【エジプト】[9]
- 紀元前1950年:エシュヌンナ法典【アッカド】
- 紀元前1900年:Legend of Etana(エタナの伝説)【アッカド】[10]
- 紀元前1900年:Code of Lipit-Ishtar(リピト・イシュタル法典)【シュメール】
- 紀元前1859-1840年:w:The Eloquent Peasant(雄弁な農夫)【エジプト】[9]
- 紀元前1859-1840年:シヌヘの物語(ヒエラティック)【エジプト】[9]
- 紀元前1859-1840年:生活に疲れた者の魂との対話【エジプト】[9]
- 紀元前1859-1813年:Loyalist Teaching【エジプト】[9]
- 紀元前1850年:キュルテペ・テキスト【アッカド】
- 紀元前1800年:エヌマ・エリシュ【アッカド】
- 紀元前1780年:ジムリ・リムを含むマリ文書【アッカド】
- 紀元前1754年:ハンムラビ法典【アッカド】
- 紀元前1750年:Anitta text【ヒッタイト】
- 紀元前1700年:アトラ・ハシース叙事詩【アッカド】
- 紀元前1700年:ウェストカー・パピルス【エジプト】
- 紀元前1700年:ギルガメシュ叙事詩【アッカド】
- 紀元前1650年:w:Ipuwer papyrus【エジプト】
- 紀元前1600年:シュメール創世神話【シュメール】
後期青銅器時代:紀元前1600年頃-1200年頃。以下はおおよその年代を示す。
- 紀元前1600年:ネシリム法典【ヒッタイト】
- 紀元前1500年:ニップルの貧者【アッカド】[11]
- 紀元前1500年:リグ・ヴェーダ【ヴェーダ語】
- 紀元前1500年:w:Hittite military oath(ヒッタイト軍の誓い)【ヒッタイト】
- 紀元前1500-1200年:ケレトの伝説(キルタの叙事詩)【ウガリット語】
- 紀元前1550年:死者の書【エジプト】
- 紀元前1500年:w:Dynasty of Dunnum【アッカド】[12]
- 紀元前1400年:Marriage of Nergal and Ereshkigal(ネルガルとエレシュキガルの結婚)【アッカド】
- 紀元前1400年:Autobiography of Kurigalzu(クリガルズの自伝)【アッカド】
- 紀元前1400年:アルマナ文書【アッカド】
- 紀元前1330年:アテン讃歌【エジプト】
- 紀元前1240年:アニのパピルス、死者の書【エジプト】
- 紀元前1200-900年:ギルガメシュ叙事詩のアッカド語版【アッカド】[6]
- 紀元前1200年:w:Tukulti-Ninurta Epic(トゥクルティ・ニヌルタ叙事詩)【アッカド】
- 紀元前1200年:w:Tale of Two Brothers(二人兄弟の物語)【エジプト】[13]
鉄器時代
[編集]→「サンスクリット語文学」も参照
鉄器時代:紀元前12世紀-8世紀。以下はおおよその年代を示す。
- 紀元前1200-800年:バラモン教のヴェーダ【ヴェーダ語】
- 紀元前1050年:ウェンアメンの物語【エジプト】
- 紀元前1050年:エサギル・キン・アプリの診断手引書(SA.GIG)【アッカド】
- 紀元前1050年:w:Babylonian Theodicy【アッカド】
- 紀元前1000年:w:Dialogue of Pessimism【アッカド】
- 紀元前900年:Epic of Erra【アッカド】
- 紀元前900年:アーラニヤカ【ヴェーダ語】
古典古代
[編集]紀元前8世紀
[編集]紀元前7世紀
[編集]- ヴェーダ語
- ギリシア
- 中国
紀元前6世紀
[編集]- ペルシア
- キュロス・シリンダー
- ヘブライ語聖書[14]:詩篇、エゼキエル書、ダニエル書
- サンスクリット
- スシュルタ:スシュルタ・サンヒター - 手術と医学に関する書
- カピラ:サーンキヤ・スートラ
- カナーダ:ヴァイシェーシカ・スートラ - 原子論に関する書
- w:Kashyapa Samhhita - 医学に関する書
- w:Pratishakhyas
- ギリシア
紀元前5世紀
[編集]アリストパネス:アカルナイの人々、騎士、雲、蜂、平和、鳥、女の平和、女だけの祭、蛙、女の議会、福の神
- ヘブライ語:トーラーの現存文書
紀元前4世紀
[編集]- サンスクリット語
- カタ・ウパニシャッド
- プラシュナ・ウパニシャッド
- ムンダカ・ウパニシャッド
- マーンドゥーキヤ・ウパニシャッド
- バドラバーフ:カルパ・スートラ
- カウティリヤ:実利論
- シャリホトラ:Shalihotra Samhita
- ヴィヤーサ:マハーバーラタ、プラーナ文献、ブラフマ・スートラ
- バーサ:Svapnavāsavadattam、Pancarātra、Pratijna Yaugandharayaanam、Pratimanātaka、Abhishekanātaka、Bālacharita、Karnabhāram、Dūtaghaṭotkaca、Chārudatta、Madhyamavyayoga、Urubhanga
- パーリ語:三蔵[15]
- ヘブライ
- 中国
- ペルシア
- ギリシア
紀元前3世紀
[編集]- アヴェスター語:アヴェスタ
- エトルリア語:ライバー・リンテウス
- サンスクリット
- ピンガラ:チャンダシャーストラ
- Moggaliputta-Tissa: 論事
- Kātyāyana:Vārttikakāra、Śulbasūtras
- Vishnu Sharma: Panchatantra
- Vedanga Jyotisha
- Bharata Muni: ナーティャ・シャーストラ - 古典舞踊と演劇に関する理論論文
- シンハラ語:SīhalattakathāまたはHela Atuwā - スリランカに仏教が導入された後にシンハラ語に翻訳された仏教の教えのパーリ語解説[23]
- タミル語:
- ヘブライ語:コヘレトの言葉
- ギリシア:
- ラテン:
- ルキウス・リウィウス・アンドロニクス - 翻訳家、古代ローマ劇の父
- グナエウス・ナエウィウス - 劇作家、抒情詩人
- プラウトゥス - 劇作家。『ポエヌルス』、『ほらふき兵士』等の風俗喜劇の作者
- クィントゥス・ファビウス・ピクトル - 歴史家
- ルキウス・シンシウス・アリメントス - 軍事史家
紀元前2世紀
[編集]- サンスクリット
- アヴェスター:ヴェンディダード
- 中国
- アラム語:ダニエル書
- ヘブライ:シラ書
- ギリシア
- ラテン
- プビリウス・テレンティウス・アフェル - 喜劇作家:兄弟、アンドロス島の女、宦官、自虐者
- エンニウス - 詩人
- パクウィウス - 悲劇作家、詩人
- カエキリウス・スタティウス - 喜劇作家
- マルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウス
- ガイウス・アキリウス - 歴史家
- ルキウス・アシウス - 悲劇作家、文献学者
- ガイウス・ルキリウス - 風刺作家
- クイントゥス・ルタティウス・カトゥルス - 公務員、風刺詩人
- アルルス・フリウス・アンティアス - 詩人
- ガイウス・ユリウス・カエサル・ストラボ - 公務員、悲劇作家
- ルキウス・ポンポニウス - 喜劇作家、風刺家
- ルキウス・カッシウス・ヘミナ - 歴史家
- ルキウス・カルプルニウス・ピソ・フルギ - 歴史家
- マニウス・マニリウス - 公務員、法学者
- ルキウス・コエリウス・アンティパトロス - 法学者、歴史家
- センプロニウス・アセリオ - 軍人、歴史家
- ガイウス・センプロニウス・トゥディタヌス - 法学者
- ルキウス・アフラニウス - 喜劇作家
- ティトゥス・アルブキウス - 雄弁家
- プブリウス・ルティリウス・ルフス - 法学者
- クイントゥス・ルタティウス・カトゥルス - 公務員、詩人
- ルキウス・アエリウス・スティロ・プラエコニヌス - 文献学者
- クイントゥス・クラウディウス・クアドリガリウス - 歴史家
- ウァレリウス・アンティアス - 歴史家
- ルキウス・コルネリウス・シセンナ - 兵士、歴史家
- クイントゥス・コルニフィシウス - 修辞学者
紀元前1世紀
[編集]→「パフラヴィー語文学」も参照
- パーリ:パーリ仏典
- ラテン
1世紀
[編集]- サンスクリット
- 中国
- ギリシア
- ラテン:→「古典ラテン語」も参照
2世紀
[編集]- サンスクリット
- 馬鳴:ブッダチャリタ
- パーレビ語
- アヤードガール・イー・ザレーラーン
- ウィスプラト
- Drakft-i Asurig
- ギリシア
- ラテン:→「古典ラテン語」も参照
3世紀
[編集]古代末期
[編集]4世紀
[編集]5世紀
[編集]6世紀
[編集]- ラテン
- アラム語:タルムード
- サンスクリット
- シンハラ語
- パーリ
- アイルランド:初期アイルランド文学
- ダラン・フォーゲイル:アムラ - 聖コルンバの伝記
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ Karimi, Edith (2016) (ドイツ語). Mimetische Bildung durch Märchen: Phantasie, Narration, Moral [Mimetic education through Märchen: phantasy, narration, morality]. European Studies in Education. 34. Münster: Waxmann Verlag. p. 110. ISBN 9783830984726 2018年10月25日閲覧。
- ^ Grimbly, Shona (2000). Encyclopedia of the Ancient World. Taylor & Francis. p. 216. ISBN 978-1-57958-281-4 . "The earliest written literature dates from about 2600 BC, when the Sumerians started to write down their long epic poems."
- ^ “Why Has No One Ever Heard of the World's First Poet?” (英語). Literary Hub (2017年6月22日). 2019年1月19日閲覧。
- ^ Toby A. H. Wilkinson: Early Dynastic Egypt. Routledge, London/New York 2001, ISBN 0-415-26011-6.
- ^ Jones, Mark (2006). Criminals of the Bible: Twenty-Five Case Studies of Biblical Crimes and Outlaws. FaithWalk Publishing. p. 6. ISBN 978-1-932902-64-8 . "The Sumerian code of Urukagina was written around 2400 BC."
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- ^ Miriam., Lichtheim (2006). The Old and Middle Kingdoms. University of California press. p. 23. ISBN 9780520248427. OCLC 889165092
- ^ a b c d e James P. Allen (2015). Middle Egyptian Literature: Eight Literary Works of the Middle Kingdom. Cambridge University Press. ISBN 978-1-107-08743-9
- ^ Dalley, Stephanie, ed (2000). “Etana (pp. 189ff.)”. Myths from Mesopotamia. Creation, The Flood, Gilgamesh, and Others. Oxford University Press. ISBN 0199538360
- ^ Noonan, John T. (1987). Bribes. University of California Press. p. 4. ISBN 978-0-520-06154-5 . "The Poor Man of Nippur dates from about 1500 BC."
- ^ Thorkild Jacobsen (1978). The treasures of darkness: a history of Mesopotamian religion. Yale University Press. pp. 167–168, 231 “Perhaps it was brought east with the Amorites of the First Dynasty of Babylon.”
- ^ Miriam Lichtheim, Ancient Egyptian Literature, vol.2, 1980, p.203
- ^ Berlin, Adele (2005). “Psalms and the literature of exile: Psalms 137, 44, 69, and 78”. In Flint, Peter W.; Miller, Patrick D.; Brunell, Aaron et al.. The Book of Psalms: Composition and Reception. Supplements to Vetus Testamentum: Formation and interpretation of Old Testament literature. 99. Leiden: Brill. p. 66. ISBN 9789004136427 7 June 2020閲覧。
- ^ https://www.youtube.com/watch?v=qgFnyxD7Xdk
- ^ according to ancient Jewish and Christian tradition, and some modern scholars; see above inline citations.
- ^ Talmud, Bava Bathra 146
- ^ Mishnah, Pirqe Avoth 1:1
- ^ Josephus, Flavius (1926). “11:8”. The Life. Against Apion. (Loeb Classical Library). Loeb Classical Library. pp. 448. ISBN 978-0-674-99205-4. ""For we have not an innumerable multitude of books among us, disagreeing from and contradicting one another (as the Greeks have) but only 22 books, which are justly believed to be divine; and of them, five belong to Moses, which contain his laws, and the traditions of the origin of mankind till his death.""
- ^ Stuart, Douglas K (2006). New American Commentary Vol. II: Exodus. Holman Reference. pp. 826. ISBN 978-0-8054-0102-8
- ^ “Introduction to the Pentateuch. Introduction to Genesis.”. ESV Study Bible (1st ed.). Crossway. (2008). p. XLII, 29–30. ISBN 978-1-4335-0241-5
- ^ RA Torrey, ed (1994). “I-XI”. The Fundamentals: A Testimony to the Truth (11th ed.). Baker Academic. ISBN 978-0-8010-1264-8
- ^ Sri Lankan Journal of Librarianship and Information Management Vol.4, Nos.,3&4 (July – Dec.2011) pp. 1 -58
- ^ Zvelebil, Kamil (1973). The Smile of Murugan on Tamil literature of South India. Leiden: Brill. ISBN 9789004035911
- ^ The Consolation of Philosophy (Oxford World's Classics), Introduction (2000)
- ^ Dante placed Boethius the “last of the Romans and first of the Scholastics” among the doctors in his Paradise (see The Divine Comedy).
- ^ “International Journal of Scientific and Research Publications, Volume 11, Issue 7, July 2021 682”. International Journal of Scientific and Research Publications 11. (2021) .