ジョージ・スタイナー
フランシス・ジョージ・スタイナー (Francis George Steiner、1929年4月23日 - 2020年2月3日)は、フランス・アメリカ合衆国の作家で哲学者・文芸批評家。各国の大学で比較文学講座の教授を務めた。
略歴
[編集]1929年、オーストリア系ユダヤ人としてフランスのパリで生まれた。ドイツ語とフランス語、英語を話す環境に育った。
幼少期の1940年に、ナチスがフランスに進撃したため、一家でユダヤ人迫害によりアメリカ合衆国ニューヨークに亡命、同年にアメリカ合衆国の市民権を取得。ニューヨークのフレンチ・リセで教育を受け、ギリシア語・ラテン語に通じている。
1948年、シカゴ大学を卒業。ハーバード大学で修士を取得した。1955年、オックスフォード大学で博士号を取得。1955年にザラ(Zara Steiner, 1928 – 2020、近現代史家)と結婚。1958年にデビッド(David Steiner、教育政策研究者)、1960年にデボラ(Deborah Steiner、作家、コロンビア大学教授)が生まれた。
1952年から56年まで「エコノミスト」誌の編集に関った。1956年からプリンストン高等学術研究所員となる。 1959年から60年にかけ、プリンストン大学教員。1961年、ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジの研究員(フェロー)、1969年、特別研究員(エクストローディナリー・フェロー)となる。
1974年から94年、スイス・ジュネーヴ大学教授(英文学、比較文学講座)。1994-95年、オクスフォード大学客員教授、2001-02年、ハーヴァード大学ノートン詩学講座教授を務めた。2001年にアストゥリアス皇太子賞コミュニケーションおよびヒューマニズム部門を受賞。
その他、グッゲンハイム・フェローシップ(1971)、レジオンドヌール勲章シュヴァリエ(1984)、フランス今日賞(1998)芸術文化勲章コマンドゥール(2001)などを受章[1]している。
日本との関わり
[編集]1974年4月に、慶應義塾大学の久保田万太郎基金の招きにより来日[2]。講演、および加藤周一、高橋康也、山口昌男、江藤淳を相手に、論争も交え討議を行った。
講演録・対談・スタイナー論などを収録した『文学と人間の言語 日本におけるG.スタイナー』(慶應義塾三田文学ライブラリー(現:慶応義塾大学出版会)、1974年)を出版した。編集代表は池田彌三郎(実質は安東伸介[3]、由良君美が担当)
著作(日本語訳)
[編集]- 『トルストイかドストエフスキーか』(原著1959) 中川敏訳、白水社 1968、新版2000
- 『悲劇の死』(原著1961) 喜志哲雄、蜂谷昭雄訳、筑摩書房〈筑摩叢書〉 1979、復刊1985/ちくま学芸文庫 1995、復刊2010
- 『言語と沈黙 言語・文学・非人間的なるものについて』(原著1967)
- 『脱領域の知性 文学言語革命論集』(原著1971) 由良君美ほか訳、河出書房新社 1972、新版1981
- 『青ひげの城にて 文化の再定義への覚書』(原著1971) 桂田重利訳、みすず書房 1973/みすずライブラリー(新版)2000
- 『白夜のチェス戦争』(原著1973) 諸岡敏行訳、晶文社 1978
- 1972年に行ったボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーによる世界チェス選手権決勝の観戦記
- 『バベルの後に 言葉と翻訳の諸相』(原著1975) 亀山健吉訳、叢書・ウニベルシタス 法政大学出版局(上下)、1999-2009
- 『ハイデガー』(原著1978) 生松敬三訳、岩波書店〈岩波現代選書〉1980 - 改訂版
- 岩波同時代ライブラリー 1992/『マルティン・ハイデガー』 岩波現代文庫 2000
- 『むずかしさについて』(原著1978) 加藤雅之・大河内昌・岩田美喜訳、みすず書房 2014 - 1970年代の言語・文明批評
- 『ヒトラーの弁明 サンクリストバルへのA・Hの移送』(原著1979) 佐川愛子、大西哲訳、三交社 1992 - 小説
- 『アンティゴネーの変貌』(原著1984) 海老根宏、山本史郎訳、みすず書房 1989
- 『真の存在』(原著1989) 工藤政司訳、叢書・ウニベルシタス 法政大学出版局 1995
- 『G・スタイナー自伝』(原著1997) 工藤政司訳、みすず書房 1998
- 『言葉への情熱』(原著1999) 伊藤誓訳、叢書・ウニベルシタス 法政大学出版局 2000
- 『師弟のまじわり』(原著2003) 高田康成訳、岩波書店 2011/ちくま学芸文庫 2024
- 『私の書かなかった本』(原著2008) 伊藤誓・磯山甚一・大島由紀夫訳、みすず書房 2009
- 『「ニューヨーカー」のジョージ・スタイナー』 ロバート・ボイヤーズ編、工藤政司訳[4](訳者代表)、近代文藝社 2012
- 約30年にわたり掲載された評論類[5]から選んだ28編を収録
脚注
[編集]- ^ Phillips, Adam (2001年3月11日). “Observer review: Grammars of Creation by George Steiner” (英語). The Observer. ISSN 0029-7712 2019年2月13日閲覧。
- ^ 当時助手だった髙宮利行の回想「義塾を訪れた外国人 ジョージ・スタイナー」がある。
- ^ 安東・由良の対談「ジョージ・スタイナー氏とともに」にも詳しい。『ミメーシスの詩学 安東伸介著述集』(慶應義塾大学出版会、2013年)に収録
- ^ ただし非常に誤訳・誤表記が多く、早くから絶版となった。
- ^ 1966年にエドマンド・ウィルソンから引き継ぎ、約150編を執筆した。
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- グッゲンハイム・フェロー
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- アストゥリアス皇太子賞受賞者
- レジオンドヌール勲章シュヴァリエ受章者
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- 2020年没