緯度角(
ϕ
{\displaystyle \phi }
)に対応する弧 が子午線弧。
子午線弧 (しごせんこ、Meridian arc)とは、測地学 において地球表面または地球楕円体 に沿った子午線 (経線 )の弧 を指す。子午線 は楕円 弧 で南北方向に延びる測地線 となる。
天文学 において、2地点の天文緯度 測定と子午線弧の長さとを結合することで地球の円周 ・半径 を決定した。その始まりは、紀元前3世紀のエジプト のエラトステネス で、地球が球体 であることを定量的に示した。
緯度 差1分 に相当する子午線弧長は、海里 の定義にも参考にされた。
アレクサンドリア の科学者エラトステネス による測定は、地球の大円 周長 を計算した最初であった。彼は、夏至 の正午 において、太陽が古代エジプト の都市シエネ(現在のアスワン )で天頂 を通過 するということを知っていた。一方で、彼は自身の測定結果から、彼の居住地であるアレクサンドリアで、同時刻の太陽 天頂距離 が天球 大円周長の1/50であるということも日時計が作る角度(7.2°)によって既知としており、天球と地球は同心であることから、アレクサンドリアがシエネの真北 にあるならばアレクサンドリア-シエネ間の距離は地球の大円周長の1/50でなければならないと結論づけた。隊商 の往来日数のデータを使って、彼はアレクサンドリア-シエネ間の距離を5,000スタディア であると推定した。
この結果は250,000スタディアの地球周長を意味し、単位スタディオンをアッティカ スタディオン (185m) と仮定すると、これは46,250kmに相当し、現在の値から約16%大きい。しかし、エラトステネスがエジプトスタディオン (157.5m) を使ったとすれば、彼の測定値は 39,375km(わずか1%程度の誤差 )であることが分かる。いずれにしても、幾何設定と古代の状況を斟酌すれば、16%の誤差は称賛に値するものである。
シエネは、正確にアレクサンドリアの真南にはなく、太陽の軌道 は想定よりも0.5°傾いていた。また、ナイル川 に沿って、または、砂漠 を行旅することからの陸路の距離はおよそ10%程度の誤差があったとされる。
エラトステネスによる地球形状の見積もりは、その後何百年もの間受け入れられた。およそ150年後にポセイドニオス が同様の方法によりアレクサンドリア-ロドス島 間の緯度差を測定するとともに、子午線弧長を船 の速度 と航海 の期間から仮想的に割り出し、地球周長の算出を試みた。
8世紀 に入ると中国でも子午線の計測が行われた。玄宗 より新暦編纂の勅命を受けた僧一行 は、鉄勒 から交州 にかけての測量を実施し、緯度1度の子午線弧長を351里80歩(約123.7km)と算出した。この算定と実際との誤差は11パーセントである。9世紀 前期には、アッバース朝 第7代カリフ であるアル=マアムーン の命により、アル=フワーリズミー がシンジャール平原において実施した、角度 測量によって多少良い結果が算出された。ヨーロッパ では、それまで子午線弧長測量が行われた記録が残っておらず、14世紀 にジョン・マンデヴィル が編纂したとされる"The Travels of Sir John Mandeville " (大場正史 訳「東方旅行記」, 東洋文庫 第19巻, 平凡社 , 1964, ISBN 9784582800197 )において地球が球形であることが言及されている程度であったが、16世紀 になって、もともと医師 、生理学者 であり、天文学 、数学 にも関心を持ったジャン・フェルネル (フランス語版 、英語版 ) が、経度 がほぼ等しいパリ -アミアン 間の緯度差を1度 とみなした上で、荷車 の車軸 の回転数 からその子午線弧長を決定したことを、著書"Ioannis Fernelii Ambianatis Cosmotheoria, libros duos complexa " (1528)に書き記している。
1615年 には三角測量 によるものとしては最初の子午線弧長測量がヴィレブロルト・スネル により行われたが、測量結果には数パーセントの誤差があった。その約半世紀後の1669年 にジャン・ピカール が本格的な三角測量を行い、緯度 差1度に相当する子午線弧長を0.3%程度の精度で測定した。しかしながら、この頃辺りまでは地球の形状はあくまでも真球であるという前提の下に議論が行われていた。
フランス科学アカデミー遠征隊のペルーとラップランドへの派遣[ 編集 ]
ピカールによる測量以降、測量精度が向上するにつれて、地球の正確な形状についての問題が顕在化し、地球は正確には真球より回転楕円体 と考えるべきとの意見が多くなったが、長球 なのか扁球 なのかについて議論が分かれていた。ジャック・カッシーニ は、1713年 に自らが行ったダンケルク-ペルピニャン 間の測量結果を『地球の大きさと形状』(De la grandeur et de la figure de la terre 、1720年 )に取りまとめ、この結果とルネ・デカルト の渦動説 から、地球が南北に長い長球であることを提唱した。一方では、振り子時計 をパリから赤道付近へ持ってゆくと遅くなるというジャン・リシェ による報告からの推測により、アイザック・ニュートン が発表した万有引力 の理論から赤道方向に長い扁球であると主張する学者も多数いた。
これを受け、18世紀半ば(1735年 ~1740年 )には、フランス科学アカデミー が、地球楕円体の形状の論争に決着をつけるために赤道近傍と北極近傍の子午線弧長を比較した。この測量事業は、ピエール・ブーゲ 、ルイ・ゴダン 、シャルル=マリー・ド・ラ・コンダミーヌ 、ピエール・ルイ・モーペルテュイ 及びアントニオ・デ・ウジョーア らによってペルー (現在のエクアドル )[ 1] とラップランド (トルネ谷 )で実行された。
測量結果は2地域の同緯度差での子午線弧長に対する有意差を示し、極付近の弧長 が赤道付近の弧長よりも大きいというものであった。これは赤道付近のほうが極付近よりも曲率 が大きいことを示唆しており、1687年 にニュートンが彼の著書『自然哲学の数学的諸原理 』の第3巻において提唱したとおり、地球の数学的形状は扁球として解釈できることが確認された。カッシーニが得た測量結果が不正確であったことは、彼の弟子ともいうべきニコラ・ルイ・ド・ラカーユ が1739年 から2年を費やして再測量を行うことにより確認された。
18世紀 後半にかけて、フランス科学アカデミー によってダンケルク -バルセロナ 間の子午線弧長の測量 が行われ、メートル の定義のために使われた。
日本では伊能忠敬 が第二次測量(1801年)の結果から緯度1度に相当する子午線弧長を28.2里 と導き出している。
地球楕円体 に基づく子午線弧長の計算は地図投影法 、特に横メルカトル図法 (ガウス・クリューゲル図法 )において重要な役割を果たす。またその面上の二点間測地線距離(最短距離)を求める問題もこれに帰着される。
赤道 から地理緯度
φ
{\displaystyle \varphi \,}
までの子午線弧長
S
(
φ
)
{\displaystyle S(\varphi )\,}
は、楕円積分 が含まれているため、初等関数 では表すことができないが、
φ
{\displaystyle \varphi \,}
の一次単項式 と
φ
{\displaystyle \varphi \,}
の偶数倍を位相 とする正弦 高調波 の無限級数 の一般式で書き表すことができる。またこれを指定した次数で打ち切れば有限級数 の形で近似計算に用いることができる。
オイラー は1755年 に第三離心率
e
′
′
{\displaystyle e^{\prime \prime }\,}
の二乗を微小量として用いて無限級数 の一般式を得た。
地球楕円体 の長半径 を
a
{\displaystyle a\,}
、第一離心率 を
e
{\displaystyle e\,}
として、子午線曲率半径 [ 2] は
M
φ
=
a
(
1
−
e
2
)
(
1
−
e
2
sin
2
φ
)
3
/
2
{\displaystyle M_{\varphi }={\frac {a(1-e^{2})}{(1-e^{2}\sin ^{2}\varphi )^{3/2}}}\,}
となる。赤道 から地理緯度
φ
{\displaystyle \varphi \,}
までの子午線弧長
S
(
φ
)
{\displaystyle S(\varphi )\,}
は以下のように
M
φ
{\displaystyle M_{\varphi }}
の部分積分で与えられる。
S
(
φ
)
=
∫
0
φ
M
θ
d
θ
=
a
(
1
−
e
2
)
Π
(
e
2
;
φ
,
e
)
{\displaystyle S(\varphi )=\int _{0}^{\varphi }M_{\theta }\mathrm {d} \theta =a(1-e^{2})\Pi (e^{2};\varphi ,e)}
歴史的に広く用いられてきた
S
(
φ
)
{\displaystyle S(\varphi )\,}
の無限級数 一般式は、ジャン=バティスト・ジョゼフ・ドランブル が1799年 に公表し、共通係数として率直に
a
(
1
−
e
2
)
{\displaystyle a(1-e^{2})}
を括り出し、
e
2
{\displaystyle e^{2}}
を微小量として級数展開したものである[ 3] 。
S
(
φ
)
=
a
(
1
−
e
2
)
(
D
0
φ
+
D
2
sin
2
φ
+
D
4
sin
4
φ
+
D
6
sin
6
φ
+
D
8
sin
8
φ
+
⋯
)
,
D
0
=
1
+
3
4
e
2
+
45
64
e
4
+
175
256
e
6
+
11025
16384
e
8
+
⋯
,
D
2
=
−
3
8
e
2
(
1
+
5
4
e
2
+
175
128
e
4
+
735
512
e
6
+
⋯
)
,
D
4
=
15
256
e
4
(
1
+
7
4
e
2
+
147
64
e
4
+
⋯
)
,
D
6
=
−
35
3072
e
6
(
1
+
9
4
e
2
+
⋯
)
,
D
8
=
315
131072
e
8
(
1
+
⋯
)
.
{\displaystyle {\begin{aligned}S\left(\varphi \right)&=a\left(1-e^{2}\right)\left(D_{0}\varphi +D_{2}\sin 2\varphi +D_{4}\sin 4\varphi +D_{6}\sin 6\varphi +D_{8}\sin 8\varphi +\cdots \right),\\D_{0}&=1+{\tfrac {3}{4}}e^{2}+{\tfrac {45}{64}}e^{4}+{\tfrac {175}{256}}e^{6}+{\tfrac {11025}{16384}}e^{8}+\cdots ,\\D_{2}&=-{\tfrac {3}{8}}e^{2}\left(1+{\tfrac {5}{4}}e^{2}+{\tfrac {175}{128}}e^{4}+{\tfrac {735}{512}}e^{6}+\cdots \right),\\D_{4}&={\tfrac {15}{256}}e^{4}\left(1+{\tfrac {7}{4}}e^{2}+{\tfrac {147}{64}}e^{4}+\cdots \right),\\D_{6}&=-{\tfrac {35}{3072}}e^{6}\left(1+{\tfrac {9}{4}}e^{2}+\cdots \right),\\D_{8}&={\tfrac {315}{131072}}e^{8}\left(1+\cdots \right).\end{aligned}}}
しかしながら、これはヘルメルトの式などに比べると、係数
D
{\displaystyle D}
の
(
)
{\displaystyle (\ )}
内に
e
2
,
e
6
,
⋯
{\displaystyle e^{2},\ e^{6},\ \cdots }
の項が現れ、多くの項数を必要とする。また共通係数として
(
1
−
e
2
)
{\displaystyle (1-e^{2})}
を括り出していることが原因で[ 4] 、
(
⋯
)
{\displaystyle \left(\cdots \right)}
内で
e
2
{\displaystyle e^{2}}
の冪乗の級数 の収束性 が劣る。
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセル は1825年に更成緯度
β
=
tan
−
1
(
1
−
e
2
tan
φ
)
{\displaystyle \beta =\tan ^{-1}\left({\sqrt {1-e^{2}}}\tan \varphi \right)}
で表した子午線弧長
S
(
β
)
{\displaystyle S(\beta )}
に対して、第三扁平率
n
=
1
−
1
−
e
2
1
+
1
−
e
2
{\displaystyle n={\frac {1-{\sqrt {1-e^{2}}}}{1+{\sqrt {1-e^{2}}}}}}
を用い、共通係数として
a
1
+
n
{\displaystyle {\frac {a}{1+n}}}
を括り出し微小量として
n
{\displaystyle n}
を用いて二項定理 を利用しフーリエ級数展開を行った一般式を得た[ 5] 。その級数係数は
n
{\displaystyle n}
の偶数もしくは奇数冪乗の冪級数となる。
S
(
β
)
=
a
1
+
n
∫
0
β
1
−
2
n
cos
2
β
+
n
2
d
β
=
a
1
+
n
(
c
0
β
+
∑
l
=
1
∞
(
−
1
)
l
c
l
l
sin
2
l
β
)
.
c
l
=
∑
k
=
0
∞
a
k
a
k
+
l
.
a
k
=
(
1
/
2
k
)
n
k
=
(
−
1
)
k
+
1
(
2
k
−
3
)
!
!
(
2
k
)
!
!
n
k
.
{\displaystyle {\begin{aligned}S(\beta )&={\frac {a}{1+n}}\int _{0}^{\beta }{\sqrt {1-2n\cos 2\beta +n^{2}}}\,d\beta \\&={\frac {a}{1+n}}\left(c_{0}\beta +\sum _{l=1}^{\infty }(-1)^{l}{\frac {c_{l}}{l}}\sin 2l\beta \right).\\c_{l}&=\sum _{k=0}^{\infty }a_{k}\,a_{k+l}.\\a_{k}&={\binom {1/2}{k}}n^{k}=(-1)^{k+1}{\frac {\left(2k-3\right)!!}{\left(2k\right)!!}}n^{k}.\end{aligned}}}
ここで、
j
!
!
{\displaystyle j!!}
は
j
{\displaystyle j}
の二重階乗 を表す。ただしこの式は子午線弧長の計算には広くは用いられなかった。なお一般式ではないがベッセルは、求長緯度
μ
=
π
2
S
S
(
π
/
2
)
{\displaystyle \mu ={\frac {\pi }{2}}\,{\frac {S}{S\!\left(\pi /2\right)}}}
で
β
{\displaystyle \beta }
を表す逆関数 に当たる級数展開も示している。
ここで楕円積分の関係式及び
n
{\displaystyle n}
の符号反転を考えると、地理緯度
φ
{\displaystyle \varphi }
で
S
{\displaystyle S}
を表した一般式が得られる。これらの級数の収束性は他に知られている計算式よりも優れている(級数展開に
n
{\displaystyle n}
の奇数次項が現れないなど)。
S
(
φ
)
=
a
1
+
n
∫
0
φ
(
1
−
n
2
)
2
(
1
+
2
n
cos
2
φ
+
n
2
)
3
2
d
φ
=
a
1
+
n
(
∫
0
φ
1
+
2
n
cos
2
φ
+
n
2
d
φ
−
2
n
sin
2
φ
1
+
2
n
cos
2
φ
+
n
2
)
=
a
1
+
n
(
c
0
φ
+
∑
l
=
1
∞
c
l
l
sin
2
l
φ
−
2
n
sin
2
φ
1
+
2
n
cos
2
φ
+
n
2
)
{\displaystyle {\begin{aligned}S(\varphi )&={\frac {a}{1+n}}\int _{0}^{\varphi }{\frac {\left(1-n^{2}\right)^{2}}{\left(1+2n\cos 2\varphi +n^{2}\right)^{\frac {3}{2}}}}\,d\varphi \\&={\frac {a}{1+n}}\left(\int _{0}^{\varphi }{\sqrt {1+2n\cos 2\varphi +n^{2}}}\,d\varphi -{\frac {2n\sin 2\varphi }{\sqrt {1+2n\cos 2\varphi +n^{2}}}}\right)\\&={\frac {a}{1+n}}\left(c_{0}\varphi +\sum _{l=1}^{\infty }{\frac {c_{l}}{l}}\sin 2l\varphi -{\frac {2n\sin 2\varphi }{\sqrt {1+2n\cos 2\varphi +n^{2}}}}\right)\end{aligned}}}
これらの無限級数は、含まれる
n
{\displaystyle n}
の次数を
l
max
{\displaystyle l_{\max }}
で打ち切れば有限級数となる。すなわち、
c
l
{\displaystyle c_{l}}
を下記のように近似することになる。
c
l
,
approx
=
{
∑
k
=
0
⌊
(
l
max
−
l
)
/
2
⌋
a
k
a
k
+
l
(
l
≤
l
max
)
0
(
l
>
l
max
)
{\displaystyle c_{l,\,{\textrm {approx}}}={\begin{cases}\sum _{k=0}^{\lfloor (l_{\max }-l)/2\rfloor }a_{k}\,a_{k+l}&(l\leq l_{\max })\\0&(l>l_{\max })\end{cases}}}
ただし、
⌊
x
⌋
{\displaystyle \lfloor x\rfloor }
は床関数 (
x
{\displaystyle x\,}
を超えない最大の整数 )を表すものとする。
ベッセルはまた1837年に上記の
S
(
φ
)
{\displaystyle S(\varphi )}
に対しても同じく二項定理の手法で級数展開一般式を得た。括り出された共通係数は
a
(
1
−
n
)
2
(
1
+
n
)
{\displaystyle a(1-n)^{2}(1+n)}
だった。
さらに、1880年 にフリードリヒ・ロベルト・ヘルメルト が、括り出す共通係数を前節と同じ
a
1
+
n
{\displaystyle {\frac {a}{1+n}}}
へ変更し、
n
4
{\displaystyle n^{4}}
で打切った近似式 を提示した[ 6] 。
S
(
φ
)
≈
a
1
+
n
{
(
1
+
n
2
4
+
n
4
64
)
φ
−
3
2
n
(
1
−
n
2
8
)
sin
2
φ
+
15
16
n
2
(
1
−
n
2
4
)
sin
4
φ
−
35
48
n
3
sin
6
φ
+
315
512
n
4
sin
8
φ
}
{\displaystyle {\begin{aligned}S(\varphi )\approx &\;{\frac {a}{1+n}}\left\{\left(1+{\frac {n^{2}}{4}}+{\frac {n^{4}}{64}}\right)\varphi -{\frac {3}{2}}n\left(1-{\frac {n^{2}}{8}}\right)\sin 2\varphi \right.\\&\ \left.+{\frac {15}{16}}n^{2}\left(1-{\frac {n^{2}}{4}}\right)\sin 4\varphi -{\frac {35}{48}}n^{3}\sin 6\varphi +{\frac {315}{512}}n^{4}\sin 8\varphi \right\}\\\end{aligned}}}
これは一般式にするならば下記となる。
S
(
φ
)
=
a
1
+
n
(
c
0
φ
+
∑
l
=
1
∞
(
1
−
4
l
2
)
c
l
l
sin
2
l
φ
)
.
{\displaystyle {\begin{aligned}S(\varphi )&={\frac {a}{1+n}}\left(c_{0}\varphi +\sum _{l=1}^{\infty }\left(1-4l^{2}\right){\frac {c_{l}}{l}}\sin 2l\varphi \right).\end{aligned}}}
しかしながら前節の一般式と比べるならば
−
2
n
sin
2
φ
1
+
2
n
cos
2
φ
+
n
2
{\displaystyle {\frac {-2n\sin 2\varphi }{\sqrt {1+2n\cos 2\varphi +n^{2}}}}}
の項[ 7] も級数展開したことは収束性を悪くしており、乗数の中には
−
4
l
2
{\displaystyle -4l^{2}}
が加わっている。
加えて、ヘルメルトによる導出過程は一般論としては不備があり、一般式の導出・証明には至らないものだった。しかしヘルメルトの式は簡潔で精度も良いため近似式としては普及した。
一般式としてのヘルメルトの式の証明自体については長年放置されていたが、
最終的に2009年 に河瀬和重により証明が行われた。
その際に用いられた一般式は、二項定理を経由するものではなく、ゲーゲンバウアー多項式 による級数展開を利用し一種類の無限和に集約された形であった[ 8] 。
S
(
φ
)
=
a
1
+
n
∑
j
=
0
∞
(
∏
k
=
1
j
ε
k
)
2
{
φ
+
∑
l
=
1
2
j
(
1
l
−
4
l
)
sin
2
l
φ
∏
m
=
1
l
ε
j
+
(
−
1
)
m
⌊
m
/
2
⌋
(
−
1
)
m
}
{\displaystyle {\begin{aligned}S(\varphi )&={\frac {a}{1+n}}\sum _{j=0}^{\infty }\left(\prod _{k=1}^{j}\varepsilon _{k}\right)^{2}\left\{\varphi +\sum _{l=1}^{2j}\left({\frac {1}{l}}-4l\right)\sin 2l\varphi \prod _{m=1}^{l}\varepsilon _{j+(-1)^{m}\lfloor m/2\rfloor }^{(-1)^{m}}\right\}\\\end{aligned}}}
ここで、
ε
i
=
3
n
/
2
i
−
n
{\displaystyle \varepsilon _{i}=3n/2i-n\,}
である。上式で
j
=
2
{\displaystyle j=2\,}
まで取れば、ヘルメルトの提示した近似式が得られる[ 9] [ 10] 。級数を
j
=
J
{\displaystyle j=J\,}
で打ち切れば、
n
{\displaystyle n\,}
について
2
J
{\displaystyle 2J\,}
次までで打ち切った近似式が得られることになる。
^ 18世紀においては、エクアドルという国はまだ存在していなかった。当該地域は、当時スペイン の管轄下に置かれており、後のキト 市となる“キト特別行政区 ”と呼ばれていた。1830年 に独立を果たした際に国の名称として採用された“エクアドル共和国”(「エクアドル」にはスペイン語で『赤道』の意味がある)には、“赤道付近の地域”として選ばれたこの地において実施されることとなった、フランス測地測量事業の名声が影響していると考えられている。
^ 子午線曲率半径は平面曲線 (楕円 )の幾何学的性質から初等的に求められる。例えば、Rapp, R, (1991): Geometric Geodesy, Part I , §3.5.1, pp. 28–32参照。
^ この式は日本でも広く用いられ、昭和61年版から平成21年版までの理科年表 (地学部)にも掲載されていた。
^ 共通係数
(
1
−
e
2
)
{\displaystyle (1-e^{2})}
を括り出さずに級数に組み込むか、もしくは
(
1
−
1
4
e
2
)
{\displaystyle \left(1-{\frac {1}{4}}e^{2}\right)}
を括り出すなどで、収束性は改善される。
^ 二項定理 を利用した級数展開は、
(
1
+
2
n
cos
θ
+
n
2
)
α
=
(
1
+
n
e
i
θ
)
α
(
1
+
n
e
−
i
θ
)
α
=
(
∑
k
=
0
∞
(
α
k
)
n
k
e
i
k
θ
)
(
∑
k
=
0
∞
(
α
k
)
n
k
e
−
i
k
θ
)
=
∑
k
=
0
∞
(
α
k
)
2
n
2
k
+
2
∑
l
=
1
∞
∑
k
=
0
∞
(
α
k
)
(
α
k
+
l
)
n
2
k
+
l
cos
l
θ
{\displaystyle {\begin{aligned}&\left(1+2n\cos \theta +n^{2}\right)^{\alpha }\\&=\left(1+n\,e^{i\theta }\right)^{\alpha }\left(1+n\,e^{-i\theta }\right)^{\alpha }\\&=\left(\sum _{k=0}^{\infty }{\binom {\alpha }{k}}n^{k}e^{ik\theta }\right)\left(\sum _{k=0}^{\infty }{\binom {\alpha }{k}}n^{k}\,e^{-ik\theta }\right)\\&=\sum _{k=0}^{\infty }{\binom {\alpha }{k}}^{2}n^{2k}+2\sum _{l=1}^{\infty }\sum _{k=0}^{\infty }{\binom {\alpha }{k}}{\binom {\alpha }{k+l}}\,n^{2k+l}\cos l\theta \\\end{aligned}}}
^ ヘルメルトの提示では実際には式の形にまとまっていなかったが、1912年 にヨハン・ハインリヒ・ルイ・クリューゲル (ドイツ語版 ) がヘルメルトの結果を式の形に取りまとめている。
^ この項は、不完全楕円積分項の
φ
{\displaystyle \varphi }
に関する二階微分に等しいので、級数展開形では乗数
−
4
l
2
{\displaystyle -4l^{2}}
が得られる。
^ ゲーゲンバウアー多項式を利用した級数展開は、二項定理を利用した級数展開の和の取りまとめ方を変えることでも同様の結果が得られるが、
(
1
+
2
n
cos
θ
+
n
2
)
α
=
∑
k
=
0
∞
(
−
n
)
k
C
k
(
−
α
)
(
cos
θ
)
=
∑
k
=
0
∞
(
−
n
)
k
∑
l
=
0
k
(
k
−
l
−
α
−
1
k
−
l
)
(
l
−
α
−
1
l
)
cos
(
k
−
2
l
)
θ
=
∑
j
=
0
∞
(
∏
k
=
1
j
ν
k
α
)
2
(
1
+
2
∑
l
=
1
2
j
cos
2
l
θ
∏
m
=
1
l
(
ν
j
+
(
−
1
)
m
⌊
m
/
2
⌋
α
)
(
−
1
)
m
)
{\displaystyle {\begin{aligned}&\left(1+2n\cos \theta +n^{2}\right)^{\alpha }\\&=\sum _{k=0}^{\infty }(-n)^{k}C_{k}^{(-\alpha )}(\cos \theta )\\&=\sum _{k=0}^{\infty }(-n)^{k}\sum _{l=0}^{k}{\binom {k-l-\alpha -1}{k-l}}{\binom {l-\alpha -1}{l}}\cos(k-2l)\theta \\&=\sum _{j=0}^{\infty }\left(\prod _{k=1}^{j}\nu _{k}^{\alpha }\right)^{2}\left(1+2\sum _{l=1}^{2j}\cos 2l\theta \prod _{m=1}^{l}\left(\nu _{j+(-1)^{m}\lfloor m/2\rfloor }^{\alpha }\right)^{(-1)^{m}}\right)\\\end{aligned}}}
ただし、
ν
i
α
=
(
α
+
1
i
−
1
)
n
{\displaystyle \nu _{i}^{\alpha }=\left({\frac {\alpha +1}{i}}-1\right)n}
である。
^ 平成23年版の理科年表から、それまで掲載されていたドランブルの近似式に取って代わり、河瀬の一般式とヘルメルトの近似式が掲載されている。
^ 同じ考え方に立てば、ベッセルが1825年に得た
S
(
β
)
{\displaystyle S(\beta )}
及び1837年に得た
S
(
φ
)
{\displaystyle S(\varphi )}
を次のように書き下すこともできる。
S
(
β
)
=
a
1
+
n
∑
j
=
0
∞
(
∏
k
=
1
j
ε
¯
k
)
2
(
β
+
∑
l
=
1
2
j
sin
2
l
β
l
∏
m
=
1
l
ε
¯
j
+
(
−
1
)
m
⌊
m
/
2
⌋
(
−
1
)
m
)
,
S
(
φ
)
=
a
(
1
−
n
2
)
2
1
+
n
∑
j
=
0
∞
(
∏
k
=
1
j
δ
k
)
2
(
φ
+
∑
l
=
1
2
j
sin
2
l
φ
l
∏
m
=
1
l
δ
j
+
(
−
1
)
m
⌊
m
/
2
⌋
(
−
1
)
m
)
.
{\displaystyle {\begin{aligned}S(\beta )&={\frac {a}{1+n}}\sum _{j=0}^{\infty }\left(\prod _{k=1}^{j}{\bar {\varepsilon }}_{k}\right)^{2}\left(\beta +\sum _{l=1}^{2j}{\frac {\sin 2l\beta }{l}}\prod _{m=1}^{l}{\bar {\varepsilon }}_{j+(-1)^{m}\lfloor m/2\rfloor }^{(-1)^{m}}\right),\\S(\varphi )&={\frac {a(1-n^{2})^{2}}{1+n}}\sum _{j=0}^{\infty }\left(\prod _{k=1}^{j}\delta _{k}\right)^{2}\left(\varphi +\sum _{l=1}^{2j}{\frac {\sin 2l\varphi }{l}}\prod _{m=1}^{l}\delta _{j+(-1)^{m}\lfloor m/2\rfloor }^{(-1)^{m}}\right).\end{aligned}}}
ただし、
ε
¯
i
=
−
ε
i
=
n
−
3
n
/
2
i
{\displaystyle {\bar {\varepsilon }}_{i}=-\varepsilon _{i}=n-3n/2i}
及び
δ
i
=
−
n
/
2
i
−
n
{\displaystyle \delta _{i}=-n/2i-n}
である。
Euler, L. (1755). “Élémens de la trigonométrie sphéroïdique tirés de la méthode des plus grands et plus petits” . Mémoires de l'Académie Royale des Sciences de Berlin 1753 9 : 258–293. https://books.google.co.jp/books?id=QIIfAAAAYAAJ&pg=PA258&redir_esc=y&hl=ja . Figures .
Delambre, J. B. J. (1799): Méthodes Analytiques pour la Détermination d'un Arc du Méridien ; précédées d'un mémoire sur le même sujet par A. M. Legendre , De L'Imprimerie de Crapelet, Paris, 72–73
Bessel, F. W. (1825): Ueber die Berechnung der geographischen Längen und Breiten aus geodätischen Vermessungen , Astronomische Nachrichten 4 , 241–254
Bessel, F. W. (1837): Bestimmung der Axen des elliptischen Rotationssphäroids, welches den vorhandenen Messungen von Meridianbögen der Erde am meisten entspricht , Astronomische Nachrichten, 14 , 333–346
Helmert, F. R. (1880): Die mathematischen und physikalischen Theorieen der höheren Geodäsie , Einleitung und 1 Teil , Druck und Verlag von B. G. Teubner, Leipzig, 44–48
Krüger, L. (1912): Konforme Abbildung des Erdellipsoids in der Ebene , Veröffentlichung Königlich Preuszischen geodätischen Institutes, Neue Folge, 52 , Druck und Verlag von B. G. Teubner, Potsdam, 12
Florence, Trystram (2001). L'épopée du méridien terrestre (Le procès des étoiles) . ISBN 978-2277220138
Florence, Trystram (1983/07). 地球を測った男たち . リブロポート. ISBN 978-4845700974
河瀬和重 (2009): 緯度を与えて赤道からの子午線弧長を求める一般的な計算式 , 国土地理院 時報, 119 , 45–55
飛田幹男 , 河瀬和重, 政春尋志、「赤道からある緯度までの子午線長を計算する3つの計算式の比較 」 『測地学会誌』 2009年 55巻 3号 p.315-324, 日本測地学会